広島の盛土問題について考えてみる
■新しい法律『盛土規制法』
2023年5月26日に、国民の命を守るための『盛土規制法』が施行されました。
「盛土」は、工事などの過程で土や砂を使って地面の高さを調整したり、地形を変化させたりする行為を指します。まずはこれに関連して新たに施行された法律、盛土規制法について解説します。
盛土は、建設工事や土地改良のために広く行われていますが、盛土作業が適切に行われないと地盤沈下や地すべりなどの地盤災害を引き起こす可能性があります。また、大規模な盛土は周囲の環境や景観に影響を及ぼす可能性もあります。これらのリスクを軽減するために盛土規制法が制定されました。
盛土規制法は、土地の利用計画に沿った盛土の規制を通じて、地域の安全と環境保全を目指しています。具体的には、一定規模以上の盛土を行う場合には事前に都道府県知事への申請が必要となり、その申請には盛土計画や地盤調査結果、地盤改良計画などが添付されることが求められます。
また、盛土規制法では盛土工事の進行状況や完成後の状態についての報告が義務付けられています。盛土の進行中や完成後に地盤の変動や地すべりなどの異常が見つかった場合には、都道府県知事が必要な措置を命じることも可能です。
この法律の目的は、盛土による地盤災害を防止し、地域社会の安全と環境保全を図ることにあります。盛土規制法の施行により、盛土工事の規模と内容によっては都道府県知事の許可を得る必要があるため、工事主は盛土工事に関する計画をしっかりと立てることが求められます。一方、地方自治体は地盤災害のリスクを把握し、必要な対策を講じる責任があるとされています。
盛土規制法は、日本全国で適用される法律であるため、全国の地方自治体がその規定に従って行動する必要があります。盛土を行う際には、必ずこの法律の規定を確認し、適切な手続きを踏むことが求められます。また、地盤災害の防止と環境保全のための重要な法律であり、私たちの生活に直結した問題を扱っています。
■広島の実情
広島県では、土砂災害の危険性が非常に高い地域が多く存在します。これは、広島県の地形が急峻な傾斜地が多く、降水量も多いため、特に土砂災害に対するリスクが高いとされています。
これまでに広島県で発生した土砂災害の中には、盛土作業やそれによる地形変化が一因となった事例も報告されています。盛土により地盤が不安定になったり、水の流れが変わることで、元々の地形の安定性が損なわれ、土砂災害のリスクが増大することがあります。
また、広島県では、過去に発生した広島土砂災害(2014年)を教訓に、盛土や切土などの地盤変動による災害リスクについて、県民への啓発や法規制の強化が求められています。しかし、依然として未整備の土地や、適切な許可を得ずに行われる不法盛土などが問題となっています。
このような背景から、広島県における盛土の問題点は次の3つに大別できます。
- 盛土による地形変動が土砂災害のリスクを増大させる可能性がある。
- 不法盛土や適切な許可を得ないで行われる盛土作業が存在する。
- 盛土や切土の規制強化と啓発活動による県民の理解の深化が必要。
これらの問題を解決するためには、盛土規制法の徹底的な遵守や、それに加えて地域特性に基づいた盛土の管理・規制が求められます。また、県民の理解と協力も重要で、地盤災害リスクについての教育や情報提供を通じて、より安全な地域作りを目指す必要があります。
■広島で安全に暮らす
では、どうしたら安心・安全に暮らすことができるでしょうか。
盛土の近くで安全に暮らすためには以下のような点を意識することが重要です。
- 情報の収集と理解: 自身が住んでいる地域の地質、地形、地盤状況、土砂災害のリスクについて知識を得ることが重要です。自治体が提供するハザードマップや情報ブックレット、地盤情報サービスなどを活用しましょう。
- 災害対策の準備: 避難経路の確認、非常用品の備蓄、家族間での避難計画の共有など、万一の災害に備えた対策をしっかりと行いましょう。
- 異変の早期発見: 盛土地域では地面のひび割れや傾斜、水の流れの変化、樹木の傾きなど異常が見られた場合、それが地盤災害の前兆である可能性があります。日常的に周囲の状況を観察し、異変があればすぐに専門家や地方自治体に相談しましょう。
- 建築・改築の際の注意: 新たに戸建を建てる場合や戸建の改築を行う際は、地盤調査を行うなど、地盤や地形に対する配慮が必要です。また、近隣の盛土の影響を受けないよう、専門家の意見を聞くことも重要です。
- 法規制の理解: 盛土規制法や地方自治体の条例など、盛土に関する法規制を理解し、自身の権利と義務を知ることも大切です。
これらの対策を通じて、盛土の近くでも安全に暮らすことが可能となります。しかし、完全にリスクをゼロにすることは難しいため、可能な限りリスクを低減するような生活習慣を身につけ、地域全体での協力体制を築くことが大切です。