不動産売買と自然災害・水害リスクについて

 今年も各地で豪雨や台風の被害に見舞われています。このところ毎年のように大きな水害が発生しているように思います。令和元年には東日本台風により、東日本の広い範囲で記録的な大雨により多数の河川氾濫、令和2年には熊本豪雨で球磨川等の河川氾濫と土砂災害が発生しています。ここ広島も水害で大変な被害にあっています。記憶に新しいところでは、平成26年8月の豪雨災害では安佐北区、安佐南区を中心に死者77名、平成30年7月の豪雨災害は県内全域で死者149名と甚大な被害が出ました。

 多発する自然災害と住宅の安全について改めて考える機会も当然増えています。絶対安全な場所はないかもしれないが、災害リスクの低いところ、例えば海から離れた高台や、川の近郊や傾斜地ではないところなどに住みたいというニーズは確実に高まっていると言えるでしょう。

 2020年8月、国交省令である「宅地建物取引業法施行規則」が改正され、不動産取引において説明しなければならない重要事項説明に、水防法に基づいて作成された「水害ハザードマップ」を活用した水害リスクの説明が追加・義務化されました。重要事項説明の項目に、土砂災害や津波に関するリスクは説明項目になっていたが、水害リスクは対象になっていませんでした。これだけ自然災害が多発し水害の発生頻度が高くなれば、当然水害リスクについての説明義務化が必要となってきます。不動産購入者は、重要事項説明時に必ず水害リスクへの説明をしっかり聞いて内容を把握する必要があります。もし説明がなければ宅建業法違反となることも覚えて置き、説明を求めるようにしましょう。重要事項説明では宅地建物取引業者が説明しなければならない項目は多岐にわたるので、不動産購入者は集中して説明を聞き、わからないことや不安なことがあれば質問して、納得できる回答をもらうようにしましょう。

 水害リスクについては、国交省のハザードマップポータルサイトが閲覧できるので、不動産購入申込、売買契約の前に必ず確認しておきましょう。広島市公式ホームページには防災情報サイトがありますので一度見ておくといいと思います。

 これから不動産購入を検討する方は、水害リスクを調べた上で、完全な回避ができない状況もあると思いますので、避難施設の場所なども把握しておくことも重要です。また、火災保険での補償条件や補償額も確認することが大事です。

 こうした自然災害、水害の急増の要因は、地球温暖化による異常気象といわれており、CO2削減が進んでいない現在、異常気象がいっそう深刻化し、豪雨や台風の被害はますます増加するのではないかと懸念されます。よって水害リスクへの関心度や重要度が今後ますます高まっていくことが予測されます。

 コロナ禍に増して、この自然災害、水害へ考慮し、より安心・安全な生活の場を確保できるように、場所選びの重要性を再認識していきましょう。