不動産の「2022年問題」ってなに?
不動産業界内で問題視されている「2022年問題」って何か知っていますか?今回は一つの知識としてこの問題について簡単に説明させていただきます。また、広島においてはどのような問題や影響が出るのか考えてみましょう。
そもそも2022年問題とは、生産緑地として農地だった土地が2022年に転用され、市場に大量に出回るのではないかという予想のことをいいます。2022年に「生産緑地」全体の約8割にあたる面積の営農義務が終了することで、短期間で多くの土地が売却される可能性があり、土地価格の急激な下落や、周辺の中古マンションの価値の下落などの影響が懸念されています。これが生産緑地の2022年問題と呼ばれるものです。
指定解除された農地は、市町村へ買取請求をすることが出来ますが、地方自治体の財政はコロナ禍で非常に厳しい状況が予測されますので、実際に買取りが行われることは少ないと思われます。そうなると一般市場に市街化区域内の農地が売却されると、当然、今までは農地にしか使えなかった土地が、都市計画区域の用途地域に基づいて様々な建築や利用が可能となりますので、土地の供給過多が発生し、土地相場の下落も考えられます。また新築マンションや新築戸建の建築が増加して、周辺の中古戸建や中古マンションの相場にも影響し、価格の下落を引き起こす要因となることも予測されます。需要の増加が見込めるのであれば大きく影響は無いと思われますが、コロナ禍でここ1年間の不動産売買件数は減少傾向となっておりますので、需要減少、供給過多の状況は考えられます。
生産緑地制度は、市街化区域内の農地を計画的に保全し、良好な都市環境を形成することを目的に、都市計画に生産緑地地区を定める制度です。生産緑地地区は、営農行為により初めて緑地としての機能を発揮する農地の性格から、営農の長期継続が前提となり、農地所有者や農家の方の意向を十分に尊重する必要があるため、指定要件等と照合して適当と判断される都市計画の提案があった場合に、生産緑地地区に関する都市計画の手続きを進めることとなっています。
生産緑地地区に指定されると
- 原則、建築物の建築、宅地の造成などの行為はできません。
- 「都市農地の貸借の円滑化に関する法律」に基づく農地貸借が可能になります。
- 農地に係る相続税・贈与税の免除の条件が、20年から終身に変更されます。
- 固定資産税・都市計画税の評価手法が宅地並み評価から農地評価に変更されます
- 生産緑地地区内に市が標識を設置します。
生産緑地地区の指定を受けるには、
- 500平方メートル以上の一団の農地等であること
- 都市農業振興に資する農地であること(販売するために農作物を生産している農地)
- 都市と農の共生に資する農地であること(食農体験や防災等に協力する農地)
- 営農が長期にわたって継続されること(営農の継続が困難な場合に、貸借のあっせんに同意する意志が表示された農地)
以上の条件が必要となっています。
生産緑地地区の行為の制限として、生産緑地地区においては、建築等の新築や宅地造成等の土地の形質の変更は原則できません。ただし、次に掲げる施設で、生活環境の悪化をもたらす恐れのないものについては、市長の許可を受けた後、建築確認等の手続きを経て、建築を行うことができます。
- 農産物の生産出荷施設
- 農産物の処理、貯蔵に必要な共同利用施設
- 農産物の加工・直売所
- 農業生産資材の貯蔵保管施設
- 農業従事者に休憩施設
- 農家レストラン
以上は許可申請で建築が可能となります。
そのような農地が広島に多く存在するのか?ですが、広島市では令和2年度から生産緑地制度が導入されております。まだ制度が導入されてわずか1年です。全国では、約12,160haの生産緑地地区がありますが、その内、約7,000haが東京都、埼玉県、千葉県、茨木県、神奈川県の首都圏であり、静岡県、愛知県、三重県の中部圏で約1,370ha、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県の近畿圏で約3,660haとこれらを合計すると約12,033haと全体の約99%となります。広島県は32地区の5.78haのみとなっています。
このような状況を判断すると、首都圏・中部圏・近畿圏では少なからず影響はあると思われますが、政府による対策が練られていることや、市街化区域外の土地に影響が少ないことから、全国的な価格の暴落には至らないと考えらます。また広島については、生産緑地地区がほとんど無いので、不動産相場には影響はないと思われます。
簡単ではありますが、生産緑地制度とは何か、指定解除がもたらす不動産市況への影響を考えてみました。世の中の色々な制度が不動産市況に影響するので注意深く観察していく必要がありますね。